経済同友会からの提言

やってくれました、経済同友会。4月3日に発表された「活力ある経済社会を支える社会保障制度改革」には、個人的に納得性のある提言が並びました。提言の中には、北欧をモデルにしながら日本の現状を当てはめて考え出されたと思われる内容がいくつかあり、私たちが普段話している内容が、日本の識者にきちんと認識されて提言化されているということに、なんとなく安堵感を覚えました。これはあくまで提言であるというところで、初めの一歩ではあるけれど、今後に少し希望が持てそう、かな?

提言の全容は、以下の経済同友会のHPから見ることができます。

社団法人 経済同友会
「活力ある経済社会を支える社会保障制度改革」 2007年4月3日発表

http://www.doyukai.or.jp/policyproposals/articles/2006/070403a.html

提言から、一部抜粋して掲載します。
年金財源の税制化、個人単位の年金設計化(第3号被保険者の廃止)、厚生年金の報酬比例部分の民営化、育児支援策、公的教育の強化、社会保障個人番号付与などについては、普段スウェーデンで暮らしながら日本が参考にできる内容ではないかと考えていたし、そもそもである以下の抜粋でイタリックにした部分の考え方にも共感できました。

はじめに

わが国は本格的な少子高齢化・人口減少社会を迎え、人口増加と経済の拡大を前提としていた現行の社会保障制度は大きな転換を迫られている。少子高齢化の急速な進展は、世代間扶養や老後の所得保障などの機能を維持不可能なものとし、社会保障制度の持続さえ困難にする。今後、生産年齢人口のさらなる減少と財政的制約を前提にせざるを得ない中で、持続可能な社会保障制度に向けた抜本的改革は、まさに喫緊の課題である。

一方、経済社会では、企業と個人を取り巻く環境が大きく変容している。経済のグローバル化により、企業は国際市場で激しい競争に晒され、個人は労働市場の変化に伴い能力や成果に基づいた競争下に置かれている。また、雇用や家族の形態が多様化したことも相俟って、個人にとっては、新たなリスクが発生し、それに対する公的支援のあるべき姿も変化している。我々は、人口減少社会にあっても、企業や個人の力が存分に発揮される活力ある経済社会を実現し、将来に亘り引継いでいかなくてはならない。

これからの社会保障制度の役割は、そうした活力ある経済社会を支える個人をやむを得ず生じるリスクから救うことであり、さらには、個人の自立を促すことでもある。今後の社会保障制度においては、少子高齢化への対応はもとより、企業や個人が置かれている経済社会の変化も踏まえた改革が必要であり、その際の基本的な考え方は、①自助の精神と公平性の重視、②制度としての持続性、③経済の成長に資する制度であること、の三つに集約される。

活力ある経済社会は、個人の自立が促進され、個人や企業の活動を支える制度の公平性が担保されてこそ実現する。よって社会保障制度においても自助の精神を基本に、セーフティ・ネットとしてのナショナル・ミニマムを確実に保障し、そのための財源は国民で広く公平に負担するべきである。また、今後急速に進む高齢化に伴い、このままでは社会保障給付費が経済の成長を上回って増加していくことは避けられない。社会保障制度に対する国民の信頼を得るためには、社会保障の負担を経済の身の丈に合ったものへと抑制し、持続性のある制度にしなければならない。さらに、生産年齢人口が減少する中でも、経済成長を実現させるには、労働へのインセンティブを高めることが必要である。労働市場への参加促進は、就労を通じた福祉の実現や、社会保障制度の支え手を増やすことに繋がる。また、介護や子育てと就労との両立を支援することは、ワーク・ライフ・バランスの観点からも重要である。

経済同友会は、これまでに年金、医療、介護についての抜本的改革と、社会保障制度としての一体的改革について提言を行ってきた。今回は、目指すべき経済社会の理念と、社会保障制度が置かれている現状を鑑み、我々の提言の妥当性を改めて提示するために、過去の提言を踏まえながらも、その実現に向けた理論的補強や具体化を行った。加えて、活力ある経済社会を支える社会保障制度のあり方に着眼し、最も重要な四つの政策に焦点を絞り、提言をまとめた。

(中略)

(1) 公的年金制度においては、全額目的消費税で賄う新基礎年金制度により、老後の生活におけるナショナル・ミニマムを保障する。

(2) 75歳以上の高齢者に対する医療においては、独立した高齢者医療制度で適正な医療サービスを提供する。診療報酬体系には、標準医療の設定を前提に、入院、外来ともに定額払いを拡大する。

(3) 介護、子育て、就労支援策においては、現役世代の活力を経済成長に注ぐことに力点を置き、労働市場への参加を促す。

(4) 社会保障に個人番号制度を導入し、年金、医療、介護、生活保護の給付における一体的改革を進める。医療においては、カルテ、レセプトの電子化、オンライン化を徹底し、標準医療の設定に向けたインフラを整備する。

(以下略)

/a